「ん?おお、名前か!」
「ねえ、古典の教科書貸して!忘れちゃったの。」
「おお、別にいいぞ!」
ちょっと待っとけ!そう言ってロッカーの方に向かう夕。
夕とは所謂幼馴染み、という奴だ。
小さい頃からずっと隣で過ごしてきた大事な、奴。
「ほいよ!」
「ありがとー!今度何か奢るっ。」
「まじか!楽しみにしてるな!」
そんな夕の声を聞きながら急いで教室に戻った。
□ ■ □
「やばいやばいやばい……!」
全速力で廊下を走る。
外は既に陽が落ちていて暗い。
「今日放課後委員会がなければ……!」
そうしたら夕に教科書を返してすぐに帰れたのに!
お願いだからまだ体育館の電気がついていますように!
「まだっ、電気っ、ついてるっ………。」
やば、息出来ない、むせる。
しゃがみこんで息を整える。
え、私めちゃくちゃ体力無くね?
たかが数百メートルダッシュで息切れってどーよ。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
「…ん?私?」
遠慮がちに肩を揺すられてのろのろと顔を上げる。
すごく心配そうな顔をした女の子がいた。
「大丈夫だよー。少しダッシュして疲れてただけだからね。」
へらり、と笑うと目の前の女の子の顔が少しだけ緩んだ。
「心配かけちゃったみたいでごめんね。あ、私苗字名前と言います。二年です。帰宅部です。」
「(はわわわわわ先輩だった…!)や、谷地仁花です。一年です。男バレのマネージャーしてます。」
「!男バレ!?ねえまだ練習してるよね?」
「あ、はい。でもあと少しで終わると思います!」
「そっか、ありがとう!ごめんね、部活中に。ありがとう仁花ちゃん!」
「あ!え!こ、こちらこそです名前先輩!それでは!」
ペコリ、とお辞儀して体育館に駆けていく仁花ちゃん。
(あと少しで終わるなら待ってよ)
ボーッとしていたら体育館の方から大きな声。
終わったのかな、
少しずつ歩いていくと人影が見えた。
あれは、、
「潔子先輩?仁花ちゃん?」
「「名前(先輩)?」」
二人ともこちらにきてくれた。
優しい…!
「部活終わったんですか?お疲れ様です!」
「ありがとう。西谷なら体育館にいるわ。」
「あ、ありがとうございます!それじゃあ!仁花ちゃんも、バイバイっ!」
□ ■ □
「あ、あの清水先輩…。」
「?なに?」
「西谷先輩と名前先輩は付き合ってるんですか…?」
「………はやく、」
「?」
「はやく付き合えばいいと思うわ。」
「!(笑った!)」
□ ■ □
「すいませーん!西谷夕いますかー!」
「おっ、苗字じゃんか。久しぶりだなー。」
「あ、菅原先輩、久しぶりですー。夕、いますか?」
「おう、ちょい待ち。」
菅原先輩は奥にいるであろう夕を呼んでくれた。
「すいません、ありがとうございます、助かりました!」
「いーべ、いーべ。もう暗いし、帰るなら西谷に送ってもらえよ。」
「菅原先輩に言われなくても送っていきますよ!」
その台詞にどきりとした。
いや、、ちょっとこれは、不意打ち。
「おー、じゃあ気をつけて帰れよー。」
「うぃっす!お疲れ様でした!」
「う、あ、菅原先輩さよなら!」
□ ■ □
「菅原先輩…。」
「ん?どした日向。」
「さっきの人って、西谷先輩のか、彼女ですか!!」
日向が聞いてきたけど、影山と山口も気になってるっぽいな。
月島は興味無さそうだけど。
「あー、あれは……。」
「あれは……!?」
「はやく、くっつけばいいと思うよ。」
そう言ってくすり、と笑った。
□ ■ □
「いやー、なんか夕と帰るの久しぶり。」
「そーだなー、俺部活だし、お前帰宅部だし。」
「ほんとだね。…今、すごい懐かしいや。」
昔は二人で手繋いで歩いたな、この道。
「つかなんでお前今日残ってたんだ?」
「あー、、委員会。あと遅くなったけど教科書、返そうと思って。」
かばんを探る、あ、あった。
「はい、ありがとね。」
「…………おう。」
「?……どうしたの?夕。」
このあとの夕の発言に私は驚く事になる。
「いや、やっぱ俺、お前のこと好きだなーっと思って。」
「っ!は!?」
「すきだ名前。」
「なっ……!」
顔が火照る。
どうしてくれようか、このバカ!
「わ、わたしだって……」
すきだバカ!!
真実の愛情
(お、おま、両想いじゃねーかよ!)
(う、ううううるさい!わたしだってびっくりしてるんだから!)
(俺と、付き合ってくれよ)
(!!………うん)
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